ストリート・アートを探しに、町歩き

ストリート・アートを探しに、町歩き

どんなところでも、その地のことを知りたかったら、まず歩くのが一番。「足で」見て回ると、車やバスからでは知り得なかった町の一面が現れます。ニュープリマスの中心部は1.5キロメートル×400メートル程度ととてもコンパクト。どこへ行くにも徒歩圏内なのが魅力です。メインストリートはデボン・ストリートで、郵便局があるカリー・ストリートを境にイーストとウェストに分かれています。町の西側は、美術館、博物館、アートグッズのお店など、カルチャーを感じさせるエリアです。

小さな町に、ストリート・アートがたくさん!

ニュープリマスの町の中心部を歩いていると、「おや?」「あれ?」「あそこにも」と気づくのが、壁に描かれたストリート・アート、ミューラルです。私たちの視線の位置にあって目を引くもの、ふと見上げた拍子に気づくもの、はたまた路地裏にあるものと、場所はさまざま。作者も有名なアーティストあり、名も知れぬアーティストあり。作風もバラエティーに富んでいます。

ストリート・アートは町を行く人誰もの目に触れ、町を元気にしてくれるものですが、一方で「落書き」ととり、好意的ではない人もいて、なかなか「美術」として認めてもらえない分野です。法的に認められない場所に描かれることもあり、昨日あったのに、今日行ってみたら、ミューラルが突然なくなっていた、なんていうことも。もっとも、さらに面白い作品に取って代わられているケースもあるわけで、はかない運命であることもストリート・アートの魅力のひとつなのかもしれません。今回はニュープリマス中心部の西側を周辺にある、ユニークなミューラルを幾つか拾ってみましょう。

King St.とEgmont St.の角

~現代アート専門の美術館、ゴヴェット・ブリュースター・アート・ギャラリー/レン・ライ・センターからすぐ

クリエイティブ活動をする際に「イーノ」を名乗る、ミカエレ・ガーディナーさんの作品は、ニュープリマス市内の他の場所でも見ることができます。当地だけでなく、国内各地で数々の賞を受賞している、才能あるアーティスト、ミカエレさんの作品のひとつがこれです。ストリート・アートに対し、街並みを管理する、日本でいう市役所にあたるシティ・カウンシルは「景観破壊」というレッテルを張りますが、彼は「普通の人たちが気に入ってくれることが一番大切」と、消される可能性があっても、作品を生み出しています。

ニュープリマスを気に入り、英国から移り住んだリサ・デニスさん。リサさんは、「アートを一般の人たちの目に触れる街角に持ち込みたい」と考えています。2枚のウサギの絵はどちらも、彼女の作品。先に描かれた割には保存状態が良い右の絵はビニールでできています。一方、左のものは、ウサギを厚紙に描き、昔ながらの小麦粉と水をまぜたノリで壁面に張ってあるだけ。数ヵ月しか経たないのに、日光や風にさらされ、かびも生えてしまっています。双方が好対照になすようにとのリサさんの意図があります。

Ariki St.とEgmont St.の角

~プケ・アリキの博物館側の裏手にある駐車場の壁はストリート・アーティストにとって絶好のカンバス

駐車場を囲む壁の一部に描かれているひとつがこれ。実は、左半分がアーティストの「ギャスプ」、右半分が「トラスト・ミー」のコラボなのです。町の他のミューラルに比べて、少し「落書き」っぽい感じがします。

2011年にニュープリマスでも試合が行われたラグビー・ワールドカップを機に描かれたもの。グラフィック・デザイナーであり、イラストレーターでもあるアレックス・マクロードさんの作品です。彼は屋外の大型のミューラルを描くのを好んでいるそう。さまざまなスタイルの絵を描き分けることができるアーティストです。ここには、ところどころに当地の観光スポットが描かれています。どれが何かわかりますか。

駐車場からエグモント・ストリートを挟んだ向かい側の建物の横壁に描かれた、原生の鳥トゥイ。作者のチャールズ&ジャニーン・ウィリアムズさんに言わせれば、鋭いまなざしで町を見守っているのだそうです。中には絶滅の危機に瀕するものもある、ニュージーランドならではの鳥の美しさを、モダンでカラフルに描くのが2人のスタイルです。チャールズさんは20年以上、ジャニーンさんも15年以上、現代アートに貢献し、ミューラルは全国各地の街角に活気を与えています。

Huatoki Plaza近辺

~以前行われたストリート・アート・フェスティバルの会場となっただけあり、多くの作品が集まる

広場を挟んで、図書館の入り口の向かい側にある狭い路地を入った右側にあるのが、国内外のストリート・アート・シーンで活躍するショーン・ダッフェルさんの作品。オリジナリティにあふれる、彼でしか創り得ないミューラルです。ストリート・アートは、周辺コミュニティにエネルギーを与え、文化面で貢献すべきものと彼は考えます。養子として育ち、自分のもともとの出自がはっきりしないことを前向きに捉え、今、自分の素性を想像し、それを表現したアートを創り出しているそう。

ちょっとマンガちっくな幾つかの絵を両側に見ながら、路地を抜けた左手、フアトキ・プラザに面したところにある作品。狐の親子でしょうか。黒を背景に、暖色で描かれ、目を引きます。

教会横のトゥイがスピリチュアル系なら、このトゥイは忠実に姿が描かれている点で伝統的といえるかもしれません。伝統的とはいっても、鳥の頭上には光輪がありますね。ニュージーランドの鳥たちへの敬意の表れなのかもしれません。作者は先ほど登場したチャールズ&ジャニーン・ウィリアムズさん。フアトキ川にかかる橋の側面に描かれています。狐のミューラルの上にある、固有の鳥プケコの絵も、チャールズさんとジャニーンさんの作品です。

私たちを見下ろし、圧倒する巨大なゾウ。北島の東海岸出身のオーウェン・ディッピーさんが描いたものです。アーティスト歴は10年以上。国内や、ロサンゼルス、ニューヨークなど米国の街角を、アインシュタインやプレスリーなどの大型の肖像画で飾ってきました。彼の作品は、ハフィントンポストが2015年に選んだ、「ベスト・ミューラル」のひとつに選ばれています。自分の作品を次世代にも見てほしいと常に意欲的に活動。オークランドには彼のギャラリーもあります。

小ぶりな広場、フアトキ・プラザに面するのは四角いトンネルでしょうか。向こうに向かって橋がかかっていて、渡れそうです。でも、何だかちょっと変ですね。そう、これはだまし絵になっているのです。街角にだまし絵を描くことで、それを楽しむ人々との間に対話が生まれると考えるジョン・ピューさんの作品です。ジョンさんは、彼の絵を通して人々に、今いる場所から、ほかの場所に瞬間移動してしまう、もしくは2つの場所に同時に自分が存在するかのような感覚を味わってほしいそう。

遠くからは立体的に見えるけれど、実はまっすぐの壁に描かれた面白い作品は、アーティスト、「BMD」が得意とするスタイル。BMDは自分たちがどこの誰か明かしていなかったものの、約1年前に解散する際に発表。ニュープリマス自慢のアーティスト、アンドリュー・スティールさんとデイマン・ラドクリフ・スコットさんのペアだったのです。すぐ隣に描かれた絵が工事でなくなってしまったので、もしかすると、これも同じ運命なのかも。早めに見に行くことをお薦めします。

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Gill St沿い

メイン・ストリートであるデボン・ストリートと平行に、1本海寄りに走る「裏道」

リアデット・ストリートとギル・ストリートの角にある、コーヒー焙煎店には、どちらの通りに面した壁にも絵が描かれています。でも、ここで見てほしいのは、建物の裏側に回ったところにある、ミカエレ・ガーディナーさんと、現在は東京で活動中のK・ナーフさんのコラボのミューラル。細かい部分まで見ると、なかなかユニークで不思議です。コンテナが置かれてしまい、下半分が見えなくなっているのが、とても残念。

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ここにご紹介したストリート・アートはほんの一部。ニュープリマスの中心部にはミューラルがまだまだあります。場所は、ギル・ストリート沿いをさらに東へ行ったところ、博物館側のプケ・アリキ前の芝地、プケアリキ・ランディングから、海沿いを走るコースタル・ウォークウェイへ抜けるトンネル内など。ぜひ自分の足で探してみてくださいね。