刻々と変化する自然ははかなくもあり、美しくもある――トンガポルツ訪問

刻々と変化する自然ははかなくもあり、美しくもある――トンガポルツ訪問

ニュープリマスがある北島西海岸の気候は時として過酷です。タラナキ山から吹き降りてくる風、タスマン海の海風と荒波、そして激しい雨。猛威をふるう自然は人間に被害をもたらすこともありますが、一方で、海岸線をダイナミックで、独創的な風景に創り上げます。自然のパワーと美を身をもって感じ取ることができるところが、郊外にあるトンガポルツです。

年に2メートルという早いペースで海岸線の侵食が進み、刻一刻と表情を変えるトンガポルツ。人々がトンガポルツにひかれるのは、「三姉妹」があるからです。「三姉妹」とはいっても、人間ではありません。西海岸の厳しい気象が創り上げた巨岩を姉妹に見立て、こう呼んでいるのです。周辺にはほかにも、奇怪な姿の岩や、色や形もさまざまな石がビーチのそこここに見受けられます。

干潮の時にしかできない体験

トンガポルツへは、ニュープリマスからステートハイウェイ3を、車で1時間ほど北上し、トンガポルツ川の手前にあるクリフトン・ロードに入ります。トンガポルツ川の河口には、別荘が並んでいます。とはいっても、日本でいう「別荘」とは違い、シンプルな造りの小屋といったたたずまい。少し進むと、右に折れる道があり、「The Tree Sisters」という看板が出ています。周辺には、ピクニック用のテーブルとベンチがあるので、そこでお弁当というのもお薦めです。

トンガポルツを訪れるにあたって大切なのは、事前に干潮の時間を調べること。理由は2つあります。1つは潮が引いている時でなければ、醍醐味を味わえないため。そしてもう1つは潮が満ちてくると危険だからです。ゆっくり散策したいのであれば、最も水位が低くなる時間をはさむようにして訪れると良いでしょう。潮の干満はグーグルなどの検索サイトで簡単にチェックできます。ニュープリマスにあるタラナキ港(Port Taranaki)、もしくは近隣のモカウ(Mokau)の情報がトンガポルツにも当てはまります。それと、お天気が良い日を選ぶようにしてください。これも同様の理由からです。

洞窟を覗いたり、岩のトンネルを抜けたり

まずは河口に下りていくと、海ももう目の前。キラキラ光る黒い砂のビーチに通じています。川の向こう側にも、こちら側にも切り立った崖がそびえています。崖沿いに海を目指します。奥行きはそうありませんが、ところどころぽっかりと口を開けた洞窟があります。中に入って、ちょっと冒険気分。暗い洞窟の中から外を眺めると、周囲の風景がより鮮やかに目に飛び込んできます。

海岸まで出ると、もとは崖の一部だったのだろうなと想像がつく、大きなこんもりとした岩があります。真ん中あたりには幾つか穴が開き、こちら側と向こう側をつなぐトンネルになっています。かくれんぼをすると面白そうです。海側には、柱状の岩が波にさらわれそうになりながらも、この岩を支えるように立っています。

ビーチ沿いに歩を進め、崖を見上げると、染み出す水のおかげで、岩肌はしっとりと濡れ、地層がくっきり浮き上がって見えます。足元には幾つも重なった岩盤が横たわり、潮溜まりができています。ところどころに取り残された小さな魚やカニの姿が。岩壁のそこここには、小さな黒い貝がびっしりついています。ムール貝です。満潮には、そこまで水位が上がることを示しています。

あたりに転がる岩は、見る者によっていろいろなものに姿を変えます。帽子だったり、人の顔だったり、大波だったり……。三角形の巨岩には、これまた三角形のトンネルが開いています。そこからは見えるのは海を背景にたたずむ「三姉妹」のうちのひとり。彼女たちに会えるのはもうすぐです。

形は変わっても、美しさは変わらず

三角トンネルを抜けると、高さ25メートルはあろうかという巨岩が目の前に現れます。「三姉妹」です。しかし、数えてみると3人おらず、2人しかいません。そうなのです、もともとは3人いたのですが、2003年の悪天候で、1人が波間に消えてしまいました。2014年には、新しい妹が誕生し、再び三姉妹になりますが、それも一時のこと。姉妹は生まれては消えていきます。それでも、残された「姉妹」はまっすぐに空に向かって背を正し、足元に波を遊ばせながら、海のかなたを見つめて立っています。


Photo © itravelNZ® - New Zealand in your pocket™/Flickr

「三姉妹」を後に、幾つかの洞窟がある崖を横目にさらに進みます。行く手には岩のトンネルもあります。くぐり抜けて、向こう側に広がる砂のビーチにあるのが、「エレファント・ロック」。ゾウの形をした巨岩です。とはいうものの、現在ゾウの姿を見てとることはできません。2016年12月に、長い鼻と顔の部分が崩れ落ちてしまったからです。気候だけでなく、11月中旬に南島のカイコウラを襲った大地震の影響もあるといわれています。上の写真が鼻があった当時、下の写真が現在の写真です。ゾウの姿に見えなくなってしまったのは残念ですが、形を変えた今でも、トンガポルツの海岸線を彩る、ユニークな造形美のひとつには変わりありません。

トンガポルツに来ると、めまぐるしく移り変わる自然の残酷さと美しさの両方を感じることができます。断崖絶壁を目前にし、巨岩に囲まれていると、人間の存在の小ささを痛感すると共に、自然の大きさに言葉を失います。自然が織り成す美は、私たちに感動だけでなく、生き方を振り返る絶好のチャンスも与えてくれそうです。